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01年版の日経連「春季労使交渉の手引き」も、「企業は競争力を強化するため、付加価値に占める最大の項目人件費を最大限に有効活用する必要がある。

人事処遇制度の改革は、能力主義、成果主義を強める流れにありこうした改革が従業員を活性化させ、企業競争力を高めることにつながる」と、そのねらいを述べている。 ここからも、そのねらいの第一が、人件費の削減にあることは明瞭だろう。
中高年の賃金をおしつぶしてフラットにするなどして人件費を大幅にカットしようというわけだ。 「N」(01年1月15日付)の「報告」の解説記事でも、その見出しが「成果主義指向の制度で総額人件費管理の徹底を」となっている。
第2に、これは「手引き」の言葉でいえば「従業員の活性化」である。 個別管理の強化で従業員同士を競わせ、分断していっそうの労働強化をしいる、というねらいだ。
ここには後述のように、労資の関係の実質を「集団的なもの」から「個別的なもの」へ移してしまう、つまり労働組合を骨抜きに第3章95年以降の日経連「労問研報告」する、という重大なねらいも隠されている。 第3に、「報告」も強調する労働力の流動化を、いっそう加速させようというねらいがある。
企業が労働者の「出し入れ」を自由にしたいということ、つまり、欲しくない労働者を大量に排除(解雇)し、先端技術をもつ若手など欲しい労働者を「高賃金」で採用できるような、まさしく「出し入れ自由」な人事賃金制度として、いま「成果主義」が経営者の求愛の対象となっているのである。 「成果主義」は、かりにそれが「公正」に運用されたとしても、労働者のなかに激しい競争を持ち込むものであることは疑いなく、そうである以上それは、労働者の団結を弱め、結局、雇用・労働条件をいっそう劣悪にするものだといわざるをえない。
だからこそ、日経連などがその普及に「情熱」をもやしていると考えていい。 一部の労働組合がそれに同調しているのは、まことに残念なことである。
2001年版「報告」で「成果主義」指向が鮮明に打ち出され、「成果主義」が「報告」を特徴づけている最大のテーマであると前述した。 その日経連の「成果主義」指向と、これからみる日経連の労資関係対策とは深く結びついている。

したがってこれは、同時に、実質的な春闘つぶし策でもある。 「報告」の最終章が「今次労使交渉の課題」と称して、実質的な「集団的労使関係つぶし」、実質的な「春闘つぶし」をねらった記述となっている。
労資をめぐる環境変化を理由に「報告」は、「かつてのように、各企業労使がいわば横並びの対応で賃金などの労働条件を決めれば済む時代ではない。 成果主義が指向される人事・賃金制度の下で、従来のような一律賃上げの水準を交渉することは意味がない」と述べている。
「報告」のこの主張は、企業業績がバラバラな今日、横並びの賃金決定である春闘は意味がない、交渉は労働者個々人の「成果」を基準に個別におこなうべきである、というものである。 これは実質的に労働組合を排除し、資本にとって絶対的に有利な「個別の土俵」で賃金など労働条件を決めていく、というものだ。
「実質的に労働組合を排除」というところが日経連の「高等戦術」で、春闘を形骸化・空洞化はしても春闘の「形骸は残す」というのである。 この点について「報告」は、次のように「賃金など労働条件を横並び対応で決定する時代は終わったから、いわゆる春闘も終篇したという見方もある。
しかし、われわれは年に一度、自社の労働条件、経営の実状、さらに企業を取り巻く経済環境の変化などについて、労使が真剣に論議することは望ましいと考える」。 このように経営側の一方的な宣伝の場、労働条件の改善に応じられないことを労働者に説得する場として「形骸化した春闘」は役に立つ、というのだ。
団体交渉、労使協議制、職場懇談会など多様であるが、人にかかわる幅広い課題について、労組、従業員の末端にまで企業の施策の趣旨についての理解を深めるために、労使協議制の活用が期待されこの労使協議制の活用が、「集団から個の時代へ」というキャッチフレーズのもとに、01年版「報告」ではとくに強調されている。 この点について「報告」は、「今後は個別労使をめぐるトラブルを未然に防止する趣旨からも、労組の有無にかかわらず、企業内のさまざまなレベルで労使協議の仕組みをつくり、労使の話し合いを深める努力が望まれる」と述べてもいる。
「個別管理」を強化すれば当然拡大する労資間の矛盾を想定して、さらには政治のゆきづまりがもたらす重大事態にそなえて「報告」は、これまで協調主義労組の協力で維持してきた「労使の平和」を、今後もなんとしても継続させたいのである。 これは財界というより支配層共通の「悲願」といつる」といっている。

「労使が手を携えて、21世紀が明るい時代となるよう、自信をもって行動しよう」という文言で01年版「報告」が終わっていることからも、それがかれらの「悲願」であることがわかる。 2002年版「労問研報告」は日経連最後の報告となった。
「最後」というのは、02年5月、日経連と経団連の両財界団体が統合したからだ。 もっとも、新組織の会長に内定していたO碩・日経連会長が「新団体になっても引き続き、同様な報告書をまとめてまいりたい」と述べていた(02年版「報告」が採択された02年1月2日の日経連臨時総会での挨拶)。
また「報告」の序文でも、O会長が「経営と労働の問題を広く論議する本労働問題研究委員会も、新組織の中に存続させたい」と言明している。 だから、03年以降もこれまでの「労問研報告」と同様の「報告書」が新団体(「日本経済団体連合会」JBF)から刊行される。
新団体になっても「報告」を作成し続けることにした最大の理由は、それが財界の春闘対策の「武器」として欠かせないと考えているからだけではなかろう。 彼らのいう「構造改革」の核心である雇用破壊・賃金破壊等をいっそうエスカレートさせるための「有効なイデオロギー攻撃の場」(宣伝・マィンドコントロールの場)だと「労問研報告」を位置づけ重視しているからに相違ない。
こうしていまや「労問研報告」は、春闘対策の域を超え、財界の基本戦略提起の主要な舞台となっている。 「隠れたベストセラー」ともいわれるその発行部数の多さからも、たしかに「労問研報告」は財界の戦略提起の「主要な舞台」といえる。
そうである以上、労働者・労働組合サイドとしても、それを軽視するわけにはゆくまい。 以下、02年版「報告」のねらい。
不当性を明らかにし、労働運動前進の参考に供したい。 なお、02年版「報告」では、97年の「報告」以来、次第に具体化させてきた「日経連流ワークシェアリング」が、完全失業率5%台半ばという深刻な雇用情勢のもとで本格的に提起され、特別の役割を担わされている。
マスコミでも昨今、ワークシェアリングという言葉が頻繁に登場している。 それを「要求」としてかかげる労働組合もあらわれている。
こうした状況をふまえて、「報告」の提起した「ワークシェアリング」について立ち入って検討する。 2002年版「労問研報告」のメーンタイトルは、「構造改革の推進によって危機の打開を」である。

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